自由診療と保険診療の違い

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自由診療と保険診療の違い

「治ればいい」から「どう治すか」へ。未来を見据えた選択を

歯科医院を受診される際、「保険でお願いしますか？それとも自費にしますか？」と問診票やカウンセリングで聞かれた経験がある方は多いと思います。しかし、その違いを「費用の安い・高い」だけで判断してしまってはいないでしょうか？

実はこの2つは、単なる金額の差ではなく、「治療の目的」や「使用できる素材」、「治療にかけられる時間」など、医療としての質そのものが大きく異なります。保険診療は、国の定めたルールの中で「最低限の機能」を取り戻すための治療です。一方、自由診療（自費診療）は、制約にとらわれず「見た目の美しさ」「適合の良さ」「再発の予防」など、患者様にとって最善の結果を追求できるオーダーメイドの治療です。

「とりあえず今の痛みが取れればいい」のか、それとも「10年後も健康な歯でいたい」のか。治療法の選択は、その後の歯の寿命を左右する大きな分岐点となります。当院では、それぞれのメリット・デメリットを正しく理解していただいた上で、患者様ご自身が納得できる治療法を選んでいただきたいと考えています。

保険診療（公的医療保険制度）とは

国民皆保険制度に基づき、日本全国どこでも一律の治療が受けられる仕組みです。治療費の負担が原則1〜3割で済むため、経済的なハードルが低いのが最大の特徴です。

主な特徴と目的

保険診療の目的は「疾病の治療」と「基本的な機能回復」に限定されています。「噛めるようになること」がゴールであり、審美性（見た目の美しさ）や、最新技術による予防効果などは、制度上重視されていません。

メリット

安価である：自己負担額が少ないため、治療費を抑えられます。
均質性：どの歯科医院でも一定水準の治療が受けられます。

デメリット・注意点

素材の制限：奥歯には銀歯、前歯には変色しやすいプラスチックなど、使用できる素材が決められています。
ルールの制約：新しい治療法や予防的なアプローチが認められていない場合があり、最適な治療を選べないことがあります。

自由診療（自費診療）とは

公的保険のルールに縛られず、患者様のご希望に合わせて最適な素材や技術を用いる治療です。費用は全額自己負担（10割負担）となりますが、その分、質の高い医療を受けることが可能です。

主な特徴と目的

自由診療では「機能回復」に加え、「美しさ」「生体親和性（体への優しさ）」「耐久性」を追求できます。セラミック治療やインプラント、精密な根管治療などがこれに当たります。

メリット

選択の自由：審美性・耐久性に優れた高品質な素材を使用できます。
精密な治療：時間をかけた丁寧な処置や、高精度な機器（マイクロスコープ等）の使用が可能で、再発リスクを低減できます。
身体への配慮：金属アレルギーの心配がない素材を選ぶなど、全身の健康を考えた治療が可能です。

デメリット・注意点

費用：全額自己負担となるため、保険診療に比べて高額になります。
医院ごとの差：医院によって価格や提供する技術レベル、保証内容が異なります。

「治療のゴール」はどう違う？

同じ「むし歯を削って詰める」という治療でも、目指す到達点が異なります。

保険診療のゴール：日常生活への復帰

「痛みを取り除く」「最低限噛めるようにする」ことが最終目標です。見た目が多少不自然であっても、あるいは数年後に劣化する可能性があっても、国の定めた手順通りに治療を行うことが求められます。いわば「マイナスをゼロに戻す作業」に近いと言えます。

自由診療のゴール：QOL（生活の質）の向上

「天然の歯と見分けがつかない美しさ」「違和感のない噛み心地」「長期間トラブルが起きない状態」を目指します。単に治すだけでなく、治療後の生活がより豊かになること、そして将来的な再治療のリスクを極限まで減らすことが目標です。「ゼロに戻すだけでなく、プラスの価値を加える治療」と言えます。

「素材」と「技術」による予後の差

歯科治療において、何を使うか（Material）と、どう治すか（Technique）は、歯の寿命に直結します。

1. 素材の違い：見た目と耐久性

保険診療（銀歯・レジン）：銀歯は強度がありますが、目立つ上に、経年劣化で成分が溶け出し、歯茎の黒ずみや金属アレルギーを引き起こすリスクがあります。また、プラスチック（レジン）は吸水性があるため、変色や口臭の原因になることがあります。

自由診療（セラミック・ジルコニア等）：陶器や人工ダイヤモンドなどの素材は、表面が滑らかで汚れ（プラーク）がつきにくく、変色もしません。生体親和性が高く、アレルギーの心配もないため、身体に優しい素材です。

2. 精度の違い：むし歯の再発（二次カリエス）リスク

保険診療：限られたコスト内で行うため、型取り材や接着剤の質に限界があり、詰め物と歯の間にミクロの段差が生じやすい傾向があります。この隙間から菌が入り込み、詰め物の下で再びむし歯になる「二次カリエス」のリスクが高まります。

自由診療：変形の少ないシリコン印象材や、拡大鏡・マイクロスコープを用いた精密な形成により、歯と補綴物（詰め物）を極限まで密着させることが可能です。これにより、細菌の侵入を防ぎ、歯を守ることに繋がります。

「時間」という見えないコスト

実は、治療にかける「時間」も大きな違いの一つです。

保険診療の場合

限られた点数（費用）の中で医院を運営するためには、一定の時間内で効率よく多くの患者様を診療する必要があります。そのため、1回の治療時間が短くなったり、簡単な処置でも数回に通院を分けざるを得ないケースがあります。「説明が早口でわかりにくい」「通院回数が多い」と感じるのはこのためです。

自由診療の場合

制限がないため、一人の患者様に十分な時間を確保できます。

納得いくまでカウンセリングを行う
マイクロスコープを使い、肉眼では見えない細部まで時間をかけて処置する
精度の高い型取りを慎重に行う

精度の高い型取りを慎重に行うこのように「手間暇をかける」ことができるため、結果として治療の精度が上がり、通院回数も最小限に抑えられることが多いのです。

経済的な視点で考える「コストパフォーマンス」

「自由診療は高い」というイメージがありますが、長期的な視点で見るとどうでしょうか。

保険診療で安く済ませても、数年後に劣化して再治療が必要になれば、その都度、歯を削ることになります。歯は削れば削るほど脆くなり、最終的には抜歯に至ってしまいます。一方、自由診療で初期費用がかかったとしても、10年、20年と長持ちし、再治療の必要がなければ、トータルでの身体的・経済的負担はむしろ軽くなる可能性があります。

また、自由診療の費用は医療費控除の対象となります。確定申告を行うことで、支払った税金の一部が還付される制度も活用できますので、実質の負担額は表示価格よりも抑えられる場合があります。